■事例-1で紹介したような話はいっぱいあります。やっぱり、セッティングがきちんとできてないっていうのが1番ですね。そういうクルマを見るとたいていが作り物(溶接)が汚かったり、配線処理がシロートっぽかったり、見た目からヤバイ。ある店でやったクルマなんか、インタークーラーのパイピングが鉄の輪切りで、しかも溶接がアーク溶接でしたよ。こういうの見るたびに、直接その店に「金取るんじゃねぇ!」って文句言いに行きたくなります。

 さて、次に紹介するのは、こういうのとはちょっと違うケースです。クルマは33GT-R。このお客さんは某有名ショップで、すでに外装、足回り、ブレーキ等含めてけっこうな金額をかけていじってました。エンジンはHKSの2.8LキットにトラストのT517Zのツインで、APEXのパワーFCで制御。

 お客さん「とりあえず全開にすると黒煙がすごいんですよ。何度かリセッティングしてもらったんですがダメで……。この仕様の前はノーマルエンジンに34N1タービンで、2.8キット+517Zにすれば激変するって言われて変えたんだけど(このときに500〜600万もかかったらしい)、前とあまり変わってないような……ブーストの立ちも良くないし……かといって他のチューニングカーに乗ったこともないからこんなものなのかと思ったり……どこがおかしいのか、とりあえず乗ってみてください」ということでした。このショップはウチとわりと近くで、何年か前に街道沿いにド〜ン!と移転し、もうかってんだなぁって思ってました。もうかってるショップはどんな仕事をしてるのか?ちょっと興味がありました。

 で、クルマを見ると、パーツはいろいろ付いてて(高そうなブレーキや足まわりなど)、エンジンルームもスゴくはないけど、付いてるものはちゃんと付いてる。アイドリングも安定してるし、空吹かししても別に悪くない。実際乗ってみると、ノーマルエンジンにタービンポン付け仕様ですって感じ。まさか本当にエンジンノーマルじゃねぇ〜だろうな?と工場に戻っていろいろチェックすることにしました。圧縮はあるし、カムもちゃんと入ってる、バルタイも振ってある。プラグの穴からストロークを計るとちゃんと2.8L。逆に、どうやったらこういうフィーリングにできるの?って不思議なくらい「?」マークがいっぱい。ウチだったら数10万円で作れるっしょ。

 セッティングし直したところでそんな激変はしないだろうし、もっと詳しく調べるならエンジン開けることになるし、開けるとなればけっこうなお金かかるし……。そんなことをお客さんにありのまま説明し、少しずつやっていくことに決定。まずは、お客さんも前からエアフロを外してVプロにしたいと思ってたようなので、リセッティングから始めました。黒煙のことも気になるし……。高速で全開してみると、やっぱり何かおかしい。インターセプトが7000rpm以上。圧漏れしてんだろうなぁ〜。こりゃ、ホントちょっとずつ見ていくしかないってことで、現在進行中です。有名ショップでも(有名になったからなのか?)こんなもんかって思いましたよ。要はマッチングですな、マッチング。

 今回の件みたく(金額は別として)、それなりに付いてる物は付いてて、それなりにちゃんと走るから、タチ悪い。実際、お客さんてそうそう同じような仕様車と乗り比べたりできないわけで。こういう微妙な(?)トラブルに悩んでいるお客さんが全国にはいっぱいいるんだろうなって、ちょいと考えさせられました。